臨床検査室における血液ガス分析装置の導入経緯とその活用 社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 鳥取県済生会境港総合病院様

社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 鳥取県済生会境港総合病院

|2024-04-16

ラピッドポイント500eによるメンテナンス業務の改善と、エポックを活用したバックアップ体制の構築

鳥取県境港市にある鳥取県済生会境港総合病院は、「病む人に光(あかり)をともす より良い医療をめざして さりげない気配りと和顔愛語(わげんあいご)で 心暖まる病院を築きあげよう」という理念のもと、1961年に境港市唯一の総合病院として開設されて以来、高齢化の著しい当地域において夜間、休日問わず二次救急指定病院として年間700台以上の救急搬送を受け入れるなど、急性期医療に注力されています。同病院の臨床検査科では2023年12月の機器更新時に、血液ガス分析装置のラピッドポイント500e、エポック、STECH(ステッチ)を導入されました。導入の決め手や、導入後の変化やメリットについて臨床検査科の皆さんにお話しをうかがいました。

施設概要 

  • 主な指定:救急告示病院(二次救急・洋上救急)、臨床研修指定病院(協力型)、日本内科学会認定医制度教育関連病院、日本神経学会教育認定施設、日本整形外科学会教育認定施設、日本外科学会外科専門医制度認定施設、日本消化器学会認定施設、日本消化器内視鏡学会指導施設、マンモグラフィ検診認定施設、他
  • 病床数:197床(2024年7月5日現在)
    一般病床105、地域包括ケア病棟60、療養型病床30、感染症病床2(床)
  • 診療科:20科(2024年7月5日現在)
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臨床検査科は現在13名のスタッフで運営しています。2つの部門に分かれており、検体検査部門に8名、生理検査部門に5名です。血液ガス検査を実施するスタッフはうち10名おり、血液ガス分析装置に関わる業務は3名の専任担当者が実施しています。

血液ガス検査の実施は大体1か月あたり60件前後です。検査の依頼は救急外来に搬送された患者様に実施することがメインです。患者様の入院後の経過観察や病態が変化した際に血液ガス検査が施行されています。院内の血液ガス検体は全て臨床検査科で測定しています。

更新前の他社装置は10年以上使用していました。年1回の保守点検を契約していたのですが、10年目以降は機器の精度を考えると管理は難しい状態となりました。また、これまでの保守・修理履歴を参照すると、故障した場合は、高額な部品交換が必要となっているケースがありました。このため、部品交換して使い続けるよりも機械を更新した方が経済的だと総合的に判断したこともあり、装置の更新を検討しはじめました。機器更新時はまず技師長が情報収集を行い、2023年の夏頃、Siemens Healthineers のホームページを参考に検討した上でお声がけをさせていただきました。

以前使用していた装置は定期メンテナンスの頻度が多く、管理が大変でした。1か月に1回、3か月に1回など、交換頻度の異なる消耗品や電極のメンブランを定期的に交換する必要があり、管理の手間がありました。年1回の保守点検に関わる点では、場合によって点検時に電極の交換が必要なこともありました。電極は単価も高い消耗品です。コストがネックになっていたことも確かです。また、点検中は2時間くらい機器を止める必要がありました。この間測定ができないので、点検日前には院内向けに「血液ガス検査は測定できません」と案内していました。病棟からの検体はもちろん、救急外来の検査もできません。検査科としては、すぐに結果が返せるように、少しでも検査を止めない工夫をしたいと考えていました。

上述の課題がある中で、ラピッドポイント500eの試薬カートリッジの仕組みが魅力的に感じられました。毎月のカートリッジ交換の際に、中にある電極や流路も毎回新品になるため、電極交換を含む年1回の保守点検も不要と伺い、電極を追加購入する必要もないことから、コスト管理の面でもすごく良いなと思いました。また、一緒にご提案いただいたエポックは、500eの試薬カートリッジを交換するときにどうしても測定できない時間が生じますので、その時のバックアップ用(お守り!?)として導入しました。

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臨床検査科の皆さま

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操作の様子(ラピッドポイント500e)

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操作の様子(エポック)

検査科が主導で他部署のスタッフ、特に血液ガス検査に関わる医師や看護師向けにトレーニングを実施したのですが、やはり操作性が変わったことに戸惑いはあったと思います。1番の違いは操作手順が変わったことでした。以前は血液ガス専用のシリンジを装置に置くことで操作は終わりでしたが、ラピッドポイント500eの場合はシリンジを1回1回差し込む方法ですよね。ただ、これは使いやすさにもつながるところで、モニター画面にシリンジの差し込み方法や、必要時にはアニメーションのガイダンスも流れるので、検査科のスタッフ以外の誰にでも操作ができる点が良いところだと感じました。

やはり1番の変化は、メンテナンスの頻度が大幅に減ったことです。これまではメンブランの交換を1か月、3か月と定期的に実施していました。また、週1回のタンパク除去、キャリブレーション実施後の確認やクリーニング溶液、ガスボンベの残量確認、コントロール溶液の確認・・挙げたらきりがありませんでした。現在は気にしないといけないことは基本的に3つのカートリッジ交換だけです。一番期限が短いものでも洗浄廃液カートリッジですし、極端に言うと、特に問題なければ10日間は何もしなくていい、ということです。以前の装置だと、日々何かはしていて、毎日機械を構っている状態が多かったように思います。今は、血液ガスの担当者が始業前と、終業時に機械のチェックをしていますが、そういう意味で、手がかからなくなったことが、日々の業務軽減、改善につながったと感じています。あとは測定時間です。以前よりも、測定してから結果がでるまでの時間が体感で30秒くらい早くなったと思います。

まだ導入して1 か月あまりですが、Siemens Healthineers のホームページを見ると、エポックをうまく使用しているご施設もあったので、今後は活用の機会も増やしていければと思っています。今は既にSTECH経由で通信も構築しているので、測定データは検査システムと連携しており、いつでも使える状態にしています。バックアップ用に購入した「エポック」はハンディタイプなので、検体を検査室以外ですぐに測定したい時、例えば訪問診療などで使用するなど、ニーズがあれば対応できるようにしたいと考えています。