バイプレーンと手術台を組み合わせたハイブリッド手術室を有効活用Artis Q BA Twin with Maquet Magnus * の有用性~
国立循環器病研究センター様事例~

脳と心臓血管の専門的治療と研究を行う、世界でも有数の施設「国立循環器病研究センター」。2019年に新築移転し、4室のハイブリッド手術室が稼働していますが、そのうち1室はバイプレーンと手術台を組み合わせた脳神経外科専用として運用されています。装置の使用感、運用体制、バイプレーンの有用性などをうかがいました。 

*製造販売元:ゲティンゲグループ・ジャパン株式会社

国立循環器病研究センター様

|2023-08-28

片岡 先生 当院の脳神経外科では、主に脳血管障害への直達手術と血管内治療を行っています。病院の特質上、全国から難治症例が紹介されてくることも多いのですが、それらに対し、脳血管障害それぞれの専門家が協議・検討したうえで、最適だと思われる治療を最高水準で提供しています。 

今村 先生  直達手術と血管内治療、どちらがその患者さんにとってより安全かを検討して治療を選択することになりますが、どちらの治療法になっても、担当医が術者を務めるというスタンスでやっています。

櫛 先生  当科には直達手術、血管内治療、ガンマナイフなど、それぞれのエキスパートが揃っています。通常の方法では治療困難と思われる症例には、それぞれを組み合わせた複合治療を行い、成果を上げています。

前田 先生 当科は「断らない麻酔科」を目指しており、他施設では困難な手術や、動脈乖離やバイパス手術といった緊急手術も、可能な限り受け入れています。当院のハイブリッド手術室は、心疾患用のシングルプレーン3室、脳神経外科用のバイプレーン1室で構成されています。心疾患用の3室ではマッピングやアブレーション、EVAR、TEVAR、MitraClipなどが、それぞれの用途に適した部屋で行われています。何かあった時に麻酔科医がすぐに駆け付けられるといったアクセスの良さも、ハイブリッド手術室の強みですね。

片岡 先生  治療困難症例への複合治療に大変力を発揮しています。とはいえ、複合治療の症例数はさほど多くはありません。通常の直達手術や血管内治療も不自由なく行えるように設計したことで、あらゆる脳血管障害の手術が可能となり、高い稼働率を維持しています。

今村 先生  基本的に出血性の疾患はハイブリッド手術室を使用しています。例えばクモ膜下出血の治療前の再出血は、血管撮影室などへの移動中に起こることが多といわれていますが、ハイブリッド手術室であれば、アンギオの結果を見てそのまま手術や血管内治療に進めます。移動回数を減らすことでリスク低減できるのは大きなメリットです。

櫛 先生  水頭症などで脳室ドレナージを行う時、ドレーンの位置をコーンビームCTで確認できるのがとても有用です。術中アンギオも血管撮影室と同等のクオリティで撮れるので、脳動静脈奇形の手術などに役立っています。

山田 技師   専門性の高い分野ですから、日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師認定機構の認定取得者で、かつ脳血管障害の治療に精通している技師が撮影操作や手術支援に携わっています。先生方をお待たせせず、ご要望に対してレスポンス良くサポートできることを一番に心がけていますので、術式・手技を理解した上で先々の展開を予測して対応できる技師の育成が重要だと考えています。

片岡 先生  バイプレーンなので脳血管内治療時に制限がなく、精度の高い治療が行えています。また、手術台を2つ使い分けることで、より多くの術式に対応できるようにしています。ユニバーサルテーブルトップ使用時の手術台とX線装置がしっかりと連動できれば、よりスムーズに使用でき、用途も広がるでしょう。

今村 先生  まだ初期段階ですから改善点はたくさんありますが、慣れることで工夫できることも増えています。一番の問題は、電動式ベッドを使うことで、脳血管内治療向けの血管撮影装置としての、本来の性能が発揮できていないことですね。今のところ、血管撮影室の装置のようには使えていません。

櫛 先生  手術台が高いため、顕微鏡手術を行う時は足元に台を置いて対応しています。直達手術だけを行う場合には、性能不足を感じますね。

前田 先生  バイプレーンなので時間短縮や被ばく線量の低減が可能となり、安全性の向上という意味で患者さんにとってのメリットがあると思います。ただし、気道に対するアクセスが悪いので、麻酔科向けの仕様とはいえませんね。もう少しコンパクトになれば、アクセスも良くなるのではないでしょうか。

山田 技師  ユニバーサルテーブルトップにするとかなり動きが遅くなります。関心領域に入った時だけスピードが抑制されるようになるとありがたいです。

片岡 先生  比較的大きな動脈瘤で、動脈瘤自身から重要な枝が出ているために、血管内治療が難しいというケースによく使っています。脳表でバイパスだけをつないで動脈瘤を処理するのですが、問題は重要な枝が脳表のどこにあるかです。透視下でマイクロカテーテルを通し、ICGを使って、術野に見えている血管が本当にバイパスすべき血管なのかを確認する際に非常に有用です。

今村 先生  シャント疾患に対しては全例術中アンギオを撮るようにしています。術中ICG血管造影だけではわかりにくいケースにも有用です。基本的に脳血管障害の手術には使用した方が良いですね。トラブル防止になると思います。

櫛 先生  緊急手術で想定外のことが起きた時に、すぐにコーンビームCTで確認できるのがとても有用です。外傷で開頭血種除去した後に脳が腫れてきたケースがあったのですが、コーンビームCTで逆側の出血がわかり、すぐに対処することができました。画質も、緊急時の判断に使用する分には、まったく問題ありません。

片岡 先生  術中に撮ったコーンビームCT画像をナビゲーションと連動させ、もう一度レジストレーションしなおして手術計画を練り直す、といった画像支援ができれば、理想的だと思いますね。

今村 先生 コーンビームCTの画質がもっと向上すれば、「CTを装備した手術室でDSAもできる」といった新たな使い方ができるでしょう。ニーズは高いと思いますよ。そうなれば、脳血管障害だけでなく、脳神経外科の手術全般で使用できるようになると思います。

前田 先生 患者さんのためには一層の被ばく線量低減化、麻酔科医としては装置がコンパクト化してアクセスがスムーズになることを望みます

お話をおうかがいした先生

国立循環器病研究センター脳神経外科:片岡先生

脳神経外科 部長
片岡 大治 先生 

国立循環器病研究センター脳神経外科:今村先生

脳神経外科 医長
今村 博敏 先生 

国立循環器病研究センター脳神経外科:櫛先生

脳神経外科
櫛 裕史 先生 

国立循環器病研究センター麻酔科:前田先生

麻酔科 部長
前田 琢磨 先生 

国立循環器病研究センター放射線部:山田技師

放射線部
山田 雅亘 技師


施設概要

病床数:550床

主なご導入装置:Artis Q BA Twin、Artis zee i BA Twin、Artis zee BC PURE(3台)、SOMATOM Force、MAGNETOM Vida、MAGNETOM Prisma、Symbia Evo Excel、Biograph Vision、ACUSON SC2000、ACUSON P500(3台)、ACUSON Freestyle(2台)

岐阜大学医学部附属病院
Artis Q BA Twinを設置した国立循環器病研究センターのハイブリッド手術室

Artis Q BA Twinを設置したハイブリッド手術室