Jan Fritz, M.D., P.D., D.A.B.R.; Filippo Del Grande, M.D., MBA, MHEM; Neil Kumar, M.D.; Derek F Papp, M.D.; Rushyuan J Lee, M.D.
Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
解剖学的構造の完全性を形態学的に評価するには、エコー時間が約30msで脂肪抑制を行わないintermediate-weighted(IW)画像が最も適している。信号強度が高く、液体が中~高信号になり、半月板や靱帯、軟骨などの低信号構造のコントラスト対雑音比が高いからである。骨髄炎や骨髄置換性病変、場合によっては骨折などにおける骨髄の評価では、脂肪信号に優れた特異性を示すT1強調のパルスシーケンスを追加すると有用な可能性がある。ただし、T1強調のパルスシーケンスは液体の信号がないため軟骨欠損、靱帯損傷、半月板断裂の検出感度が低下する。
構造的描出を目的とするパルスシーケンスは、詳細な構造の描出や軟骨亀裂、癒合、断裂などの小さな異常の検出を最大に高めるために空間分解能を高めたデザインになっていることが多い。
信号異常の評価においては、一般にエコー時間が長く脂肪抑制を併用したパルスシーケンスを用い、T2値が長い関節液、滑液貯留、浮腫などの視認性を高める。骨、靱帯、筋肉、脂肪組織における浮腫パターンの存在から、急性損傷と慢性のリモデリングによる炎症との鑑別が可能になることが多い。
異常なT2高信号域は疼痛の発生源である可能性も高い。実効エコー時間が60~70msで周波数選択的な脂肪抑制法を用いる高速ターボスピンエコー(TSE)シーケンスは液体に対する感度が非常に高い。
また、従来の周波数選択的脂肪抑制法に代えてSPectralAttenuated Inversion Recovery(SPAIR)法を用いることで、撮像領域全体にわたる脂肪抑制の均一性が高まる可能性がある〔1〕。あるいは、Short Tau Inversion Recovery(STIR)法を用いてもよい。液体に対する感度が高いシーケンスはSNR向上のために空間分解能を低下させたデザインとすることもある。液体に対する感度を低下させずに効率を向上させ、脂肪に結合したプロトンの脂肪抑制による信号低下を補償できる可能性があるからである。
2次元(2D)TSEパルスシーケンスは高い面内空間分解能(例えば、0.5×0.5mm²以下のピクセルサイズ)での撮像が可能である。しかし、十分なMR信号を得るには2~4mmのスライス厚が必要で、これは実効空間分解能の低下や部分容積効果を招く。異方性ボクセルサイズは多断面再構成の妨げになり、アキシャル、サジタル、コロナル方向の画像を個別に撮像する必要が生じる。これは時間がかかり、プロトコル全体の撮像時間が20分に及ぶことも少なくない。
Sampling Perfection with Application optimized Contrast using different flip angle Evolutions(SPACE)などの3次元(3D)TSE法は、ボリューム励起で第2の方向にも位
相エンコードステップが追加されるので、MR信号強度が大幅に上昇する。この信号強度の大幅な上昇に加えて、3Dデータセットは極めて薄いスライスの分割・生成が可能で、等方性ボクセルサイズでの3D MRIを容易に行うことができる。
そのような十分に小さいボクセルサイズの等方性データセットは部分容積効果をほぼ解消し、微細な解剖学的構造の表示を改善する可能性がある。また、ひとつの元データセットからアキシャル、サジタル、コロナル再構成断面はもとより、オブリーク面や曲断面、3Dボリュームレンダリング画像など、実質的に任意の撮像面を再構成することができる(図2)。
3D SPACEの2方向の位相エンコードは2方向でのアクセラレーションを可能にする。GeneRalized Autocalibrating Partial Parallel Acquisition(GRAPPA)サンプリングパターンを用いる2×2パラレルイメージングでは、折り返しアーチファクトなしの4倍のアクセラレーションを容易に行うことができる。さらに、Controlled Aliasing In Parallel Imaging Results IN Higher Acceleration(CAIPIRINHA)サンプリングパターンではコイルの感度分布差を最大限に活用し、gファクター性能が向上している〔2, 3〕。GRAPPA SPACEに比べて、CAIPIRINHA SPACEは画質が高く信号対雑音比が10~20%向上する(図1)。CAIPIRINHAベースの4倍のアクセラレーションではデータ収集の所要時間が大幅に短縮され、長いエコートレインや部分フーリエ法によるアンダーサンプリング、異方性データ収集などの妥協の必要がなくなる〔4-6〕。
このCAIPIRINHA SPACEに、解剖学的ランドマークに基づき撮像領域とスライス位置の自動設定を行うAutoAlign Kneeテクノロジーを組み込んだものが、GOKnee3Dの基礎を成している。GOKnee3Dはボタンを1回押すだけの完全に自動化された等方性の高分解能3D膝関節検査法で、intermediate-weighted画像およびT2-SPAIR-weighted 画像が得られ、総撮像時間は10分未満である(図3)。CAIPIRINHAベースの4倍のアクセラレーションではデータ収集の所要時間が大幅に短縮され、長いエコートレインや部分フーリエ法によるアンダーサンプリング、異方性データ収集などの妥協の必要がなくなる〔4-6〕。このCAIPIRINHA SPACEに、解剖学的ランドマークに基づき撮像領域とスライス位置の自動設定を行うAutoAlign Kneeテクノロジーを組み込んだものが、GOKnee3Dの基礎を成している。GOKnee3Dはボタンを1回押すだけの完全に自動化された等方性の高分解能3D膝関節検査法で、intermediate-weighted画像およびT2-SPAIR-weighted 画像が得られ、総撮像時間は10分未満である(図3)。
GOKnee3Dの開発に際しては、それまでのGeneralized Optimized(GO)ストラテジーと同様の戦略的な方法が採用された〔7-9〕。GOKnee3Dの臨床的妥当性の検証では、MAGNETOM Skyra(3T)で患者100例、MAGNETOM Aera(1.5T)で患者50例を対象に従来の検査法との直接比較を行った〔10〕。全例に10分間のGOKnee3D検査および20分間の従来の高画質2D検査(3方向で標準の脂肪抑制なしと脂肪抑制ありの臨床的コントラストを得る合計6個のパルスシーケンス)を実施した。専門教育を受けた筋骨格系の放射線科専門医2名が全ての画像を個別に評価した。画像の評価では関節滲出液、関節内遊離体、膝窩嚢腫、内・外側半月板断裂、内・外側側副靱帯断裂、前・後十字靱帯断裂、四頭筋腱・膝蓋腱断裂、軟骨欠損、骨髄浮腫、骨折の有無を検討した。また、全体的な画質およびモーションアーチファクトに対する感度も評価した。
その結果、10分間のGOKnee3Dプロトコルで生成された画像は、20分間の2D TSE標準プロトコルによる画像と少なくとも診断上は同等であることが示された。異常所見の診断に関しては、1.5Tでも3TでもGOKnee3D検査と2D TSE検査の間で有意差はなかった。GOKnee3Dプロトコルでは1.5Tおよび3Tともに、2D画像に比べて3D画像で読影者間一致度が高かった。現在進行中の研究において、関節鏡による検査を標準としてGO Knee3Dによる小児期1および思春期の膝内障の診断精度を検討した結果、円板状半月板、半月板断裂、靱帯損傷、離断性骨軟骨炎の診断の感度は83~100%、特異度は93~100%であった〔11〕。この研究は現在、対象を成人患者に広げている。
1 胎児に対するMRI検査の安全性は確立されていない。医療従事者は他の方法を考慮した後、検査の臨床的価値がリスクを上回るかどうかを決定することが望ましい。
右に、成人および小児の膝内障の評価におけるGOKnee3Dの臨床応用例とその手術所見を症例1-6として示す。画像は全て3T MAGNETOM Skyra(Siemens Healthcare、ドイツ・エアランゲン)でTx/Rx Knee 15サーフェイスコイル(QED、米・オハイオ州メイフィールドビレッジ)を用いて撮像した。