[取材にご協力いただいた先生方]
放射線科 鈴木 耕次郎 教授
中央放射線部 中村 勝 技師長
中央放射線部 清水 郁男 副技師長
Avantofit バージョンアップ:2017 年9 月
3 年前の病院移転で3T MAGNETOM Skyra(以下 Skyra)2 台、1.5T MAGNETOM Aera(以下 Aera)1 台を新規に導入し、Avanto 1台とAvanto Dot 1 台を移設、計5 台のMRIが稼働していました。当院では車椅子も含め歩行困難の患者は全て稼働式テーブルに乗せ換えるため、新病院では医療安全の点でDockable 式患者テーブルを取り入れ、患者の乗せ換えを検査室前室で行うよう運用を変更しました。そのため固定式患者テーブルのAvantoでは前室とMR ベッド横での2 回の乗せ換えが必要なこと、またAvantoのみ操作性が異なり別に習熟が要ることから、実施可能な検査が限られ空き時間が発生しスループットが低下していました。
そのためAvantoの更新は優先度が高く、3T 装置への新規更新とAvantofit バージョンアップをともに検討しました。インプラントやペースメーカー、腹水などへの対応として1.5T 装置の需要が高く、Avantofit は磁場均一性の高いAvantoにAeraの機能が搭載されることで、Siemens Healthineersの1.5T 装置で一番の高機能装置になると考えました。大がかりなバージョンアップですが、新規更新に比べ投資を大幅に抑えることができ、短い工期は大きな利点となりました。金銭的な利点に加えて良い装置を長く使えるという点で、今後も更新と合わせ今回のようなバージョンアップという選択を使用計画に積極的に取りいれていこうと思います。
バージョンアップ前後の検査状況の変化
- バージョンアップ後に他装置との機能差がなくなり、これまで簡単な検査を主としていたが、Avantofit では一気に上位機種となり、心臓や乳腺、下肢血管など複雑で工夫が必要な検査を実施する装置へと役割が変化した。
- 心臓、乳腺、下肢非造影血管検査など検査の幅が拡がり、効率的な装置選択ができるようになった。
- 5 台のMRI 装置全体の検査が約2 時間早く終えられるほどスループットが向上し、翌日の検査の準備や新しい検査への取り組みなど、スタッフのモチベーションが向上している。
Clinical Images
症例:肝細胞がん
肝S5に動脈相で肝実質と同程度まで造影され、門脈相(60 sec)でwashoutされる結節を認める。肝細胞相(15 min)では造影剤の取り込みは認めない。
バージョンアップによりコイルチャンネル数が増加し感度が向上した。またVIBEシーケンスにCAIPIRINHAが使用できるようになったことから、EOBプリモビスト検査は、これまでと同じ呼吸停止時間でも空間分解能の高い画像を得ることができる。
- EOB Primovist Dynamic
- iPAT: CAIPIRINHA
症例:右乳がん(浸潤性乳管がん)
右C 領域に早期濃染する不整形結節を認める。乳管に沿った進展や娘結節は認めない。
バージョンアップ前は、乳腺検査はSkyraに限定していたが、Breast 18コイルの導入でSkyraと同等の検査内容が可能となった。
またAvantofit では均一な脂肪抑制効果が得られるので、安心して乳房検査に臨むことができる。
- Breast 18 Coil
- syngo RESOLVE
症例:右顔面の血管奇形
TWIST DSAで顔面血管奇形の流入動脈、流出静脈が明瞭に描出されている。IVR 前に責任血管と血流の程度が確認可能であり、治療法を検討する際に役立てている。
Gdを使用した造影MRAはSkyraに限定していたが、バージョンアップ後はSkyraと同様に行うことができるようになった。
- syngo TWIST - DSA
症例:右前額部の血管腫(5ヶ月児)
右前額部の皮下にT2WIで高信号を呈する扁平な腫瘤を認める。3D ASLで同部は高灌流域として描出されている。
Pediatric16コイルとQuiet Suite(静音撮像)の導入で、新生児の頭部検査も速く静かに行うことができるようになった。
クレードルを使用することで、検査室内への移動もスムーズに行うことができる。
- Pediatric 16 Coil
- 3D ASL
- Quiet Suite