Cookies used for improved website experience

Siemens Healthineers and our partners use cookies and other similar technologies to operate the Siemens Healthineers websites and personalize content and ads. You may find out more about how we use cookies by clicking "Show details" or by referring to our Cookie Policy.
You may allow all cookies or select them individually. And you may change your consent and cookie preferences anytime by clicking on the "Review and change your consent" button on the Cookie Policy page.

フォトンカウンティングCT開発チーム

世界初*のフォトンカウンティングCT開発に必要だったものとは

フォトンカウンティングCTの研究開発は20年にもおよびますが、物理学者や技術者の取り組みが成功し、製品化が実現するかどうかは、必ずしも明確とは言えませんでした。成功するという自信の根拠はどこにあったのでしょうか。
* 自社調べ

文:Andrea Lutz

|2022-05-26

ドイツ連邦大統領Frank-Walter Steinmeierは、ドイツ未来賞を「人類に自信を与えてくれるアワードである」と表現しています。具体的には、「時代の大きな課題にただ流されるのではなく、基礎的な研究や最先端の研究の成果をもとに、課題を解決に導くことができる」ということです。

今回、Siemens Healthineersのチームを代表して、Björn Kreisler、PhD、Stefan Ulzheimer、PhD、Professor Thomas Flohr、PhD教授が、「フォトンカウンティングCT」プロジェクトで、この賞にノミネートされました。彼らが開発したCT装置は、人体の詳細な情報を提供し、医療用画像領域に「飛躍的進歩」をもたらすと言われています。この装置の核となるのは、個々のフォトンを計測して画像化するという、新しい検出器の原理です。半導体結晶で構成されるX線検出器により、これまで達成できなかった高解像度のCT画像を提供可能となり、貴重な付加情報が得られます。Siemens HealthineersでCT物理学を担当しているThomas Flohr氏はこう語っています。「私たちのイノベーションから得られる付加情報で医師は病気の早期診断が下せますが、診断にとどまらず、治療の決定を導き出し、患者も自らの将来に関与することができるのです」

フォトンカウンティングCTは、循環器系、呼吸器系、腫瘍系、救急医療などの先進医療診断に貢献します。

Photon counting CT Heart

私たちが患者さんに提供できるものは、より高い信頼性です。また、20年間の研究開発の中では、物理学者や技術者の仕事が成功するかどうか、市場で通用するCT装置が開発できるかどうかが必ずしも明確ではなかったため、将来への自信が必要なこともありました。しかし、この成功に対する自信はどこにあったのでしょうか?誰が最初に確信したのでしょうか?そして、それが時間とともに仕事にどのような影響を与えたのでしょうか。Thomas Flohr氏は、2001年のプロジェクト開始時のことを覚えています。「当時は、検出器材料としてのテルル化カドミウムの利点は原理上では理解できており、CT画像の高解像度化やコントラストの向上につながることはわかっていました。また、個々のX線量とそのエネルギーを個別に検出できることも明らかになりました。解剖学的構造をさらに識別することができ、異なる種類の組織をこれまでよりも確実に区別することができるようになります。しかし、当時のテルル化カドミウムの純度は、医療用画像処理の要件を満たしておらず、また十分な量を入手できないという問題がありました。

プロジェクトチームは材料の模索から作業を開始し、強力なパートナーとして、日本のアクロラド社と提携しました。自然界に存在しないテルル化カドミウムを人工的に製造する技術を共同開発し、それ以来、このパートナーシップは続いています。「最初の10年間は、医療用CTに必要な特性を得るために、結晶成長を最適化していきました」と、計測技術のプログラムマネージャーであるStefan Ulzheimerは振り返ります。2008年には、最初の試作品が作られました。しかし「また、課題が山積みであることもすぐにわかりました。一時は中止の危機もありました」。その様な状況下、どのようにしてチームは自信を取り戻したのでしょうか。


Stefan Ulzheimer, PhD

外部からの視点で分析することで、研究者は創造活動が行き詰まる危機を脱することができました。シーメンス社の中央研究開発部門の同僚は、市場機会に向けて技術を評価しました。チームが体系的な分析を行ったところ、再調整が必要な具体的な問題が明らかになりました。検出器のシニアキーエキスパートであるBjörn Kreislerは、当時は不屈の精神が必要だったと振り返ります。


<p>Björn Kreisler, PhD,</p>

それからの進展は速いものでした。2014年には、アメリカとドイツにおいて第一世代目のプロトタイプを使った最初の臨床試験が行われました。「クリニカルパートナーとの信頼関係が当社の強みになりました」とThomas Flohr氏は語ります。今回も、プロジェクトの進捗状況が第三者の目線から評価され、自信が持てました。


<p>Professor Thomas Flohr, PhD,</p>

20年間、複数のチームが分野の垣根を越えて協力し、何か特別なものができると確信していました。その結果をThomas Flohr氏は「失敗すると思われていたプロジェクトを、市場に受け入れられる価格で販売できる医療用CT装置にまで変換しました」と表現しています。

2021年以降、フォトンカウンティング検出器を搭載したCT装置は日常の臨床診断で使用されています。これにより、Siemens Healthineersは世界的なパイオニアとなり、さらに全く新しい製品ラインを導入することでCTが診断に関わる分野を広げようとしています。そのために、現在、テルル化カドミウム結晶を成長させる装置を増産して、フォルヒハイムの生産工場を拡張しています。


Andrea Lutz
医療、テクノロジー、ヘルスケアITを専門とするジャーナリスト、ビジネストレーナー
ドイツ、ニュルンベルク在住