ロボットナビゲーションとモバイルCアームイメージングシステムCios Spinを併用した脊椎手術および外傷治療の有用性について

富山大学附属病院様導入事例

富山大学附属病院は県内唯一の大学病院ですので、まず目指しているのは地域医療の充実です。安心できる地域医療を県民の皆さんに提供するということが、当院の一番大きな役割だと思っています。そのためには、もちろん、地域医療に貢献できる医師の育成も欠かせません。それに加え、大学病院が担う役目として、先端医療を追求し、先端的な研究を極めていくことも重要だと考えています。

整形外科では、多岐にわたる運動器疾患に対して、エビデンスと経験に基づいた高度医療の提供を目指しています。脊椎脊髄疾患、肩、股、膝の関節疾患、リウマチ性疾患、手外科疾患、骨軟部腫瘍、重度の四肢脊椎外傷などの患者さんに対し、それぞれの分野に精通した医師がチーム医療で治療を担当。治療方針については、全員が出席するカンファレンスで、各チームからのプレゼンテーションを全員で確認し、病態に即した、患者さんにとってより良い方法を検討して決定します。手術に関しては、スタンダードなものから最新のものまでさまざまですが、患者さんの安全を第一に考えた正確な手術治療が最優先です。最近では、脊椎および人工膝関節手術に、全国に先駆けて手術支援ロボットを導入し、安全で精度の高い手術を実現しています。

骨を扱う手術においては、どうしても術中にレントゲン透視が必要になります。そして、そのレントゲン透視はクオリティの高いものでなければ詳細な部分が把握できず、正確な手術を行うことができません。Cios Spinの透視画像は非常に高精細でクリアであることから導入に至りましたが、実際、脊椎手術などにおおいに役立っており、その有用性を実感しています。操作性に関しても、従来の装置に比べて非常に使い勝手が良く、容易に使用できると、技師さんたちから高い評価を受けています。

また、後縦靭帯骨化症への開削手術の際に、Cios Spinによる術中3D画像を作成しましたが、非常にクリアな画像が簡便に得られ、正確に開削できていることを術中に確認することができました。安全で確実な手術を行うために、とても有用であったと感じています。

ロボットナビゲーションとCios Spinのコラボレーションは、非常に簡便でスムーズに運用されています。3D画像を術中に撮影し、観察できることから、スクリューなどの位置決めの精度が向上し、今までは危険を伴うために使用できなかった長いスクリューも安全・正確に刺入することができるようになりました。さらに、症例を重ねるごとに手術時間も短縮しているため、合併症の予防や、安定した良好な手術成績の獲得に大きなメリットとなっています。当院では、ロボットナビゲーションとCios Spinのコラボレーションは、脊椎症例だけでなく、外傷症例にも使用されています。特に外傷の多い手の外科領域では、Cios Spinの高精度でクリアな画像によって、微細な部分に対してもより的確で精度の高い治療を行うことが可能となっています。

手術支援ロボットは、ロボットなしでもしっかりと手術を行える医師が、より正確・安全を期して手術を行うための道具だと考えています。最初から手術支援ロボットを使用して手術を行うことで、ロボットなしでは手術ができないような脊椎外科医を作ってしまっては元も子もありません。まさに本末転倒です。しっかりとトレーニングを積んだうえで取り組む必要があるでしょう。そのための一つの解決策として考えているのが、サージカルプランの立案段階から若手医師も参画するということです。手術方法から、使用するスクリューの長さや方向、エントリーポイントなど、どのようにすれば安全に手術を行えるかをしっかりと理解したうえで手術に臨む。Cios Spinによって得られるような優れた画像があれば、空間把握が容易で、サージカルプランも理解しやすいでしょうから、いいトレーニングになると思います。

画質を高めるためには、ある程度の被ばくは仕方がないということは理解していますが、患者さんにとっても長期的に考えれば問題が起こる可能性がありますし、我々術者にとっても蓄積された放射線被ばくというのは将来的な問題につながりかねません。Siemens Healthineersさんには、メーカーとして、できるだけ低線量でクリアな画像を得るという方向性をよりいっそう追求していっていただきたいですね。

現状としては、高性能な装置を提供していただいて、とてもありがたいと思っています。また、現場にこそ多くのノウハウが存在していると考えていますので、現場の意見をフィードバックする機会を設けていただいていることに関しても感謝しています。今後も、些細なことでも相談でき、意見を取り上げてもらえる機会を多く作っていただけることを期待しています。