土井 先生 当院では、建物の構造上の問題で、これまでハイブリッド手術室を導入することができませんでした。今回、新しい手術棟を大学病院本館に隣接して建築することによって、念願のハイブリッド手術室が完成したわけです。今後は弁膜症治療だけでなく、大血管治療への活用の場面が飛躍的に増えてくることを期待しています。
坂井 先生 ハイブリッド手術室を作るにあたり、土井先生から「とにかく情報を集めなさい」という指示がありました。全国の大学病院でも、導入している施設が多い状況でしたが、各方面から収集した情報をもとに2室のハイブリッド手術室を作ることができました。ハイブリッド手術室の使用経験がある方の意見も取り入れてもらいながら作ることができたので、良いものができたと思います。
榎本 先生 ハイブリッド手術室の構想は、当初、心臓血管外科と循環器内科用にシングルプレーンの装置が入る予定だったのですが、脳血管内治療も行えるようにバイプレーンに変えてほしいという要望を出したところ、どちらの意見も取り入れて両方導入してもらえました。現在は、開頭術はシングルプレーンの部屋で、血管内治療はバイプレーンの部屋でと使い分けています。
長瀬 先生 新しい手術室を作るにあたって、「ハイブリッド手術室」という言葉のイメージだけが先行してしまい、実際にそれが役に立つのか、当院の武器になるのか、強みをもっと引き出すことができるのか、といったことを実感できない中で導入しなければいけませんでした。そのため、ものすごく慎重に検討する必要があると考えていました。実際に導入してみると、画像が圧倒的にきれいですね。これは感謝しています。
加藤 先生 私は心臓手術が専門で、小切開低侵襲心臓手術(MICS)を中心に行っています。先日、初めてここのハイブリッド手術室でMICS-僧帽弁形成術を行いましたが、一つでも不安な点があれば透視や造影で容易に確認することができるので、安心できてとても良いと思いました。現在行なっているMICSは、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、MIDCABですが、今後、小切開田枝冠動脈バイパスを行うにあたってハイブリッド手術室がより活躍するものと思います。今後は左心耳閉鎖デバイスを使った治療や経皮的僧帽弁クリップ術にも取り組んでいきたいと考えています。
吉田 先生 TAVIをメインに使用していますが、それ以外にも当科の枠があるので、シンプルなPCIやペースメーカーの交換に使うこともあります。そういう時に装置の操作に慣れて、TAVIや有事に備えるといった使用状況です。
成瀬 先生 吉田先生がおっしゃったように、植込み型除細動器などのデバイス留置でもハイブリッド手術室を使わせてもらっています。創閉鎖が難しい症例や、若い方で傷跡を気にされるケースには、形成外科の先生に手伝ってもらうことがあるのですが、ハイブリッド手術室のおかげで施術しやすくなりました。全身麻酔下で行いたい場合に、麻酔科の先生に頼みやすくなったというメリットも感じています。
榎本 先生 動脈瘤や動静脈奇形、動静脈瘻といったfineな血管を見る場合は、絶対にバイプレーンが優先です。バイパスやドレナージなど、そこに開頭術を加える場合はそれほど精度を求めないので、患者さんの頭が少し動いたり、術者の入る範囲に制限があっても、それは許容範囲内だと思っています。しかし、開頭術がメインの場合は明らかにシングルプレーンの方が自由度が高いので、そちらを優先しています。今はまだ予定手術での運用が基本ですが、今後、操作に慣れて緊急対応もしていくということになれば、シングルプレーン使用時はバイプレーンをシングルで応用するといった使い分けも実現し、2台導入したことの真価が発揮されると思います。
長瀬 先生 ハイブリッド手術室を使用する場合、麻酔科医、看護師、診療放射線技師に加え、臨床工学技士もいたりするので、この調整が結構大変です。ただし、ハイブリッド手術室には非常に将来性があると感じています。特定の診療だけを追求できない大学病院にとって、甲乙つけがたい優れた装置を2台導入できたことは、当院一番の強みだといえるでしょう。
坂井 先生 まだ性能を生かし切れていないところもありますが、素晴らしい装置だと思います。
加藤 先生 動きが滑らかで、欲しいところに欲しいように入ってくれる感じがすごく良いです。私の今までのハイブリッド手術室使用経験の中で、一番良いと思います。後発の分、皆がいろいろな経験を持ち寄って一番良いレイアウトを考えたからでしょう。部屋ありきでいろいろなものを後付けしたハイブリッド手術室とは違い、できあがりが美しい。美しいというのは機能美ですから、ARTIS phenoと部屋の作りが有機的に機能して、トータルとして整っている。それによって、装置も最大パフォーマンスを発揮できるのではないでしょうか。
吉田 先生 特殊な機構のため、カテーテル室で使用している装置と比べると、使い勝手が異なりますが、すごく広角に見えて画像のコントラストも非常に良いので、PCIを行う際も見やすいと感じています。十分な部屋の広さが確保されていることも、使いやすさにつながっているのかもしれません。
成瀬 先生 TAVIでは全身を見ないといけない場合もあるので、広角に見ることができるのはとても良いですね。特に良いと思うのは、希釈造影剤で撮影した画像が非常にきれいなことです。TAVIプロクターの先生が「この画像、原液造影剤で撮っているんですよね」と確認されたくらい、50%希釈造影剤でも原液使用時と遜色ない画質が得られています。
榎本 先生 アクロバティックな頭位・体位をしていても、自由度高く入ってきてくれるので、患者さんの位置を動かす必要がなくて助かっています。私たち血管障害チームだけでなく、腫瘍チームも積極的に術中CT撮影を行っています。下垂体腫瘍など内視鏡下手術を行う場合、どれくらい取れているか、外側にどれくらい行っているかを確認するために撮影しています。脳実質内腫瘍でも、手術が進んでくると髄液が抜けてシュリンクし、脳の位置が変わってきてしまうので、どれくらい取れているかを術中CTで確認できるのは、非常に有効です。ナビゲ―ションも使いますが、リアルタイムの位置関係を知りたい手術の時にはとても役立っていると思います。
榎本 先生 以前の装置と比べて明らかに画質が良くなったので、視認性が格段に向上しました。コーンビームCTのクオリティも素晴らしく、診断用CTで撮影する画像とまったく遜色ないです。むしろメタルアーチファクトが低減されている分、コーンビームCTの方がより精細に見えます。ただ、良い機能がたくさんあるのですが、メニューが多すぎて術者が覚え切れていないこともあります。
土井 先生 他施設ではTAVIはすでに日常的な治療法となっており、次々と出てくる経皮的僧帽弁クリップ術などの新しい治療法についても先行されています。今後は十分な安全性を確保しながら、できるだけ早くそれらの新技術を患者さんに提供できるようにして行きたいと考えています。また、岐阜大学病院の新手術棟にはロボットも2台ありますので、他の外科分野では当たり前となったロボット補助下の心臓手術も導入していく予定です。
大倉 先生 今後、経験値が蓄積され、長期成績が安定してくれば、おそらく外科治療を行っていた症例の一部がSHDカテーテル治療にシフトしてくるでしょう。ただし、カテーテル治療に関してもその適応判断は非常に重要です。本当にその患者さんにとってカテーテル治療が適切かどうかをきちんと判断・議論できなければいけません。これまで以上に、心エコー図を中心とした画像診断による客観的な評価が大切になってくると思います。
坂井 先生 現状のシステムではベッドの位置がどうしても高くなってしまいます。開胸手術を行う場合でも手技がやりやすい高さにしていただきたいです。また、アームが当たりそうだからベッドを上げるのではなく、ベッドに合わせてアームが適切な高さに動いてくれると助かります。
加藤 先生 もう少しコンパクトになると使いやすくなると思います。麻酔科などでも取り回しが良くなるでしょう。Siemens Healthineersさんの技術革新に期待します。あとは、坂井先生もおっしゃっていたように、ベッドのパフォーマンスをもう少し上げてほしいです。リヒカを立てる場所のホールド部分など、アクセサリーの充実も図ってほしいですね。
吉田 先生 天井懸垂式のモニタや防護版が少し動かしにくく、あまり言うことを聞かない感じです。設計の段階から作った部屋なので、他の施設よりはフレキシブルにできあがっているはずなのですが、それでも干渉する部分がままある。より良い装置であるために、もう少しフレキシブルになってくれると良いですね。
成瀬 先生 アームを動かすスピードですが、速く動かしたい時とゆっくり動かしたい時の2パターンあれば良いと思います。できるだけ速く足側にもっていきたい時は高速モードで、バルサルバ洞の位置を調整する時などは低速モードでと、ボタン一つで切り替わるようになればすごく助かると思います。
榎本 先生 やはり、アクセシビリティですね。たくさん良い機能があるのに使い切れていない。「ヘイ、シーメンス」と呼びかけるとガイドしてくれるような機能が開発されるとありがたいです。また、現在は血管内治療医が増えているため、一医師当たりの経験数が少ないことが問題になっています。実際の治療経験数の少ない医師が安全に治療を行えるようなサポートシステム、例えば大動脈のカーブから仮想的な分枝血管をナビゲーションしてくれるような機能が搭載された装置ができると、とても助かります。
長瀬 先生 整形外科の脊椎医がすごく喜んでハイブリッド手術室を使っています。こういう隠れたニーズがどんどん出てくるのが大事なことだと思います。Siemens Healthineersさんには、これからも、ニーズに基づいたこだわりを持って、開発に取り組んでいってほしいですね。
お話をおうかがいした先生
施設概要
病床数:614床
主なご導入装置:ARTIS pheno, ARTIS icono D-Spin, Artis zee BA Twin, Artis zee BA, Artis zee BC, ARCADIS Orbic, MAMMOMAT Inspiration, ACUSON SC2000, ACUSON Sequoia, 他