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知識と経験を集結させた
理想的なハイブリッド手術室2室同時導入を実現

岐阜大学医学部附属病院様導入事例

岐阜大学医学部附属病院では、2022年4月に新たな手術棟が完成しました。5室増えた手術室のうち2室がハイブリッド手術室です。後発施設ならではの知識と経験が生かされ、レイアウト、スペース、設備ともに理想的なハイブリッド手術室が実現しています。2室あることの優位性、今後の手術内容の変化、効率的な運用体制などについて、心臓血管外科、循環器内科、脳神経外科、手術部の先生方にお話をうかがいました。 

岐阜大学医学部附属病院様

|2023-04-26

土井 先生 岐阜大学の心臓血管外科は、呼吸器外科や消化器外科とともに第一外科に含まれていたことに加え、医学部の講座も「高度先進外科学分野」という名前であったため、心臓血管外科のイメージが湧きにくいものでした。しかし2021年4月に外科が再編され、医学部の講座の中でも心臓血管外科は独立した分野となりました。ようやく対外的にも岐阜大学の心臓血管外科を認知して貰いやすい状況になったと考えています。私が赴任してからの6年間で体制が整い、心臓血管外科医の人数・手術症例数ともに倍増したところです。MICS弁膜症手術、off-pump CABG、大動脈弁形成術、胸腹部大動脈置換術、大動脈ステント治療など、ほぼあらゆる領域の心臓血管手術を行っています。 

大倉 先生 私たちの講座はもともと循環器内科と呼吸器内科、腎臓内科が一緒になったチームです。そのため、心臓にとどまらず、肺や腎臓も含めた幅広い領域を一緒に診療しています。もちろん、大学病院の循環器内科として専門性の高い診療を行っていますが、専門チームとしてだけでなく、総合力も兼ね備えているところが特徴だといえます。SHD治療に関しては、ハイブリッド手術室ができるのがかなり遅かったので、スタートが遅れたのは事実です。しかし、循環器内科医も心臓血管外科医も、すでに他の施設でSHD治療にかかわったことのある経験者ばかりでスタートを切れたというのが、逆に我々の強みといえるかもしれません。スタートが遅くなった分、知識も経験も十分な状態で治療に臨めています。

榎本 先生 脳血管障害に対し、直達開頭術と血管内治療の両方を同一術者が行うという文化が岐阜大学の脳神経外科にはあるので、血管障害チームは全員が開頭術と血管内治療両方の専門医を取得して治療にあたっているのが特徴だといえます。治療方法は、毎日行うカンファレンスで十分に検討しますが、開頭術と血管内治療のどちらを行っても同一の効果が得られると判断できる症例に関しては、患者さんの意見を最優先しています。患者さんは低侵襲治療を望まれることが多いので、どうしても血管内治療が多くなりますが、血管内治療で根治できずに再発した症例や、明らかに直達手術の方が向いていると思われる症例には開頭手術を勧めています。未破裂動脈瘤の場合、現状では約3割が開頭術で約7割が血管内治療です。

長瀬 先生 当院は600床クラスの大学病院としては珍しく、高度救命救急センターと県のがん診療連携拠点病院という二つの役割を担っています。そのため、がん患者さんに対する手術と緊急性の高い外傷患者さんへの手術が中心となっていて、優先すべき手術目標が全員で共有できているところが手術部の特徴です。その結果、大学病院としての役割に特化でき、効率性が良く、収益率の高い運用が可能となっています。「ミッションが共有できている」「人材が豊富」「豊かな専門性がある」「チームワークが良い」というのが手術部の強みであり、機動力があると自負しています。

土井 先生 毎週1回行われる循環器内科と心臓血管外科のカンファレンスの他に、麻酔科医師、救命センター医師、放射線科医師、看護師、臨床工学士、理学療法士、薬剤師、ケアマネージャーを含めた多職種カンファレンスを必要に応じて開催しています。ハートチーム内では診療科の垣根を低くし、患者さんの問題点や治療方針に関する情報を共有するようにしています。今回のTAVIの導入に際しても特に問題なくスムーズに進行し、最初の8症例を無事に終えることができました。

大倉 先生 TAVIを導入するにあたってハートチームを編成し、連携を深めるという施設が多いと思うのですが、当院ではTAVIを始める前から循環器内科と心臓血管外科との定期的なカンファレンスを行っており、チームワークは取れていました。手術目的で心臓血管外科に直接紹介されてきた患者さんであっても、循環器内科の判断を聞いてもらえます。循環器内科医の目から見て手術適応ではなさそうな症例や、時期尚早と思われる症例に、心臓血管外科の判断で外科的手術を行うということは一切ありません。また、術後管理においても、循環器内科から術後患者さんの検査結果を報告するだけでなく、心臓血管外科の先生が手術のビデオ画像を供覧しながら手術所見を我々にフィードバックしてくれます。それによって循環器内科医の診断技術がさらに向上しますし、次の改善点にもつながっていくと思います。

土井 先生 当院では、建物の構造上の問題で、これまでハイブリッド手術室を導入することができませんでした。今回、新しい手術棟を大学病院本館に隣接して建築することによって、念願のハイブリッド手術室が完成したわけです。今後は弁膜症治療だけでなく、大血管治療への活用の場面が飛躍的に増えてくることを期待しています。

坂井 先生 ハイブリッド手術室を作るにあたり、土井先生から「とにかく情報を集めなさい」という指示がありました。全国の大学病院でも、導入している施設が多い状況でしたが、各方面から収集した情報をもとに2室のハイブリッド手術室を作ることができました。ハイブリッド手術室の使用経験がある方の意見も取り入れてもらいながら作ることができたので、良いものができたと思います。

榎本 先生 ハイブリッド手術室の構想は、当初、心臓血管外科と循環器内科用にシングルプレーンの装置が入る予定だったのですが、脳血管内治療も行えるようにバイプレーンに変えてほしいという要望を出したところ、どちらの意見も取り入れて両方導入してもらえました。現在は、開頭術はシングルプレーンの部屋で、血管内治療はバイプレーンの部屋でと使い分けています。

長瀬 先生 新しい手術室を作るにあたって、「ハイブリッド手術室」という言葉のイメージだけが先行してしまい、実際にそれが役に立つのか、当院の武器になるのか、強みをもっと引き出すことができるのか、といったことを実感できない中で導入しなければいけませんでした。そのため、ものすごく慎重に検討する必要があると考えていました。実際に導入してみると、画像が圧倒的にきれいですね。これは感謝しています。

加藤 先生 私は心臓手術が専門で、小切開低侵襲心臓手術(MICS)を中心に行っています。先日、初めてここのハイブリッド手術室でMICS-僧帽弁形成術を行いましたが、一つでも不安な点があれば透視や造影で容易に確認することができるので、安心できてとても良いと思いました。現在行なっているMICSは、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、MIDCABですが、今後、小切開田枝冠動脈バイパスを行うにあたってハイブリッド手術室がより活躍するものと思います。今後は左心耳閉鎖デバイスを使った治療や経皮的僧帽弁クリップ術にも取り組んでいきたいと考えています。

吉田 先生 TAVIをメインに使用していますが、それ以外にも当科の枠があるので、シンプルなPCIやペースメーカーの交換に使うこともあります。そういう時に装置の操作に慣れて、TAVIや有事に備えるといった使用状況です。

成瀬 先生 吉田先生がおっしゃったように、植込み型除細動器などのデバイス留置でもハイブリッド手術室を使わせてもらっています。創閉鎖が難しい症例や、若い方で傷跡を気にされるケースには、形成外科の先生に手伝ってもらうことがあるのですが、ハイブリッド手術室のおかげで施術しやすくなりました。全身麻酔下で行いたい場合に、麻酔科の先生に頼みやすくなったというメリットも感じています。

榎本 先生 動脈瘤や動静脈奇形、動静脈瘻といったfineな血管を見る場合は、絶対にバイプレーンが優先です。バイパスやドレナージなど、そこに開頭術を加える場合はそれほど精度を求めないので、患者さんの頭が少し動いたり、術者の入る範囲に制限があっても、それは許容範囲内だと思っています。しかし、開頭術がメインの場合は明らかにシングルプレーンの方が自由度が高いので、そちらを優先しています。今はまだ予定手術での運用が基本ですが、今後、操作に慣れて緊急対応もしていくということになれば、シングルプレーン使用時はバイプレーンをシングルで応用するといった使い分けも実現し、2台導入したことの真価が発揮されると思います。

長瀬 先生 ハイブリッド手術室を使用する場合、麻酔科医、看護師、診療放射線技師に加え、臨床工学技士もいたりするので、この調整が結構大変です。ただし、ハイブリッド手術室には非常に将来性があると感じています。特定の診療だけを追求できない大学病院にとって、甲乙つけがたい優れた装置を2台導入できたことは、当院一番の強みだといえるでしょう。

坂井 先生 まだ性能を生かし切れていないところもありますが、素晴らしい装置だと思います。

加藤 先生 動きが滑らかで、欲しいところに欲しいように入ってくれる感じがすごく良いです。私の今までのハイブリッド手術室使用経験の中で、一番良いと思います。後発の分、皆がいろいろな経験を持ち寄って一番良いレイアウトを考えたからでしょう。部屋ありきでいろいろなものを後付けしたハイブリッド手術室とは違い、できあがりが美しい。美しいというのは機能美ですから、ARTIS phenoと部屋の作りが有機的に機能して、トータルとして整っている。それによって、装置も最大パフォーマンスを発揮できるのではないでしょうか。

吉田 先生 特殊な機構のため、カテーテル室で使用している装置と比べると、使い勝手が異なりますが、すごく広角に見えて画像のコントラストも非常に良いので、PCIを行う際も見やすいと感じています。十分な部屋の広さが確保されていることも、使いやすさにつながっているのかもしれません。

成瀬 先生 TAVIでは全身を見ないといけない場合もあるので、広角に見ることができるのはとても良いですね。特に良いと思うのは、希釈造影剤で撮影した画像が非常にきれいなことです。TAVIプロクターの先生が「この画像、原液造影剤で撮っているんですよね」と確認されたくらい、50%希釈造影剤でも原液使用時と遜色ない画質が得られています。

榎本 先生 アクロバティックな頭位・体位をしていても、自由度高く入ってきてくれるので、患者さんの位置を動かす必要がなくて助かっています。私たち血管障害チームだけでなく、腫瘍チームも積極的に術中CT撮影を行っています。下垂体腫瘍など内視鏡下手術を行う場合、どれくらい取れているか、外側にどれくらい行っているかを確認するために撮影しています。脳実質内腫瘍でも、手術が進んでくると髄液が抜けてシュリンクし、脳の位置が変わってきてしまうので、どれくらい取れているかを術中CTで確認できるのは、非常に有効です。ナビゲ―ションも使いますが、リアルタイムの位置関係を知りたい手術の時にはとても役立っていると思います。

榎本 先生 以前の装置と比べて明らかに画質が良くなったので、視認性が格段に向上しました。コーンビームCTのクオリティも素晴らしく、診断用CTで撮影する画像とまったく遜色ないです。むしろメタルアーチファクトが低減されている分、コーンビームCTの方がより精細に見えます。ただ、良い機能がたくさんあるのですが、メニューが多すぎて術者が覚え切れていないこともあります。

土井 先生 他施設ではTAVIはすでに日常的な治療法となっており、次々と出てくる経皮的僧帽弁クリップ術などの新しい治療法についても先行されています。今後は十分な安全性を確保しながら、できるだけ早くそれらの新技術を患者さんに提供できるようにして行きたいと考えています。また、岐阜大学病院の新手術棟にはロボットも2台ありますので、他の外科分野では当たり前となったロボット補助下の心臓手術も導入していく予定です。

大倉 先生 今後、経験値が蓄積され、長期成績が安定してくれば、おそらく外科治療を行っていた症例の一部がSHDカテーテル治療にシフトしてくるでしょう。ただし、カテーテル治療に関してもその適応判断は非常に重要です。本当にその患者さんにとってカテーテル治療が適切かどうかをきちんと判断・議論できなければいけません。これまで以上に、心エコー図を中心とした画像診断による客観的な評価が大切になってくると思います。

坂井 先生 現状のシステムではベッドの位置がどうしても高くなってしまいます。開胸手術を行う場合でも手技がやりやすい高さにしていただきたいです。また、アームが当たりそうだからベッドを上げるのではなく、ベッドに合わせてアームが適切な高さに動いてくれると助かります。

加藤 先生 もう少しコンパクトになると使いやすくなると思います。麻酔科などでも取り回しが良くなるでしょう。Siemens Healthineersさんの技術革新に期待します。あとは、坂井先生もおっしゃっていたように、ベッドのパフォーマンスをもう少し上げてほしいです。リヒカを立てる場所のホールド部分など、アクセサリーの充実も図ってほしいですね。

吉田 先生 天井懸垂式のモニタや防護版が少し動かしにくく、あまり言うことを聞かない感じです。設計の段階から作った部屋なので、他の施設よりはフレキシブルにできあがっているはずなのですが、それでも干渉する部分がままある。より良い装置であるために、もう少しフレキシブルになってくれると良いですね。

成瀬 先生 アームを動かすスピードですが、速く動かしたい時とゆっくり動かしたい時の2パターンあれば良いと思います。できるだけ速く足側にもっていきたい時は高速モードで、バルサルバ洞の位置を調整する時などは低速モードでと、ボタン一つで切り替わるようになればすごく助かると思います。 

榎本 先生 やはり、アクセシビリティですね。たくさん良い機能があるのに使い切れていない。「ヘイ、シーメンス」と呼びかけるとガイドしてくれるような機能が開発されるとありがたいです。また、現在は血管内治療医が増えているため、一医師当たりの経験数が少ないことが問題になっています。実際の治療経験数の少ない医師が安全に治療を行えるようなサポートシステム、例えば大動脈のカーブから仮想的な分枝血管をナビゲーションしてくれるような機能が搭載された装置ができると、とても助かります。

長瀬 先生 整形外科の脊椎医がすごく喜んでハイブリッド手術室を使っています。こういう隠れたニーズがどんどん出てくるのが大事なことだと思います。Siemens Healthineersさんには、これからも、ニーズに基づいたこだわりを持って、開発に取り組んでいってほしいですね。

お話をおうかがいした先生

岐阜大学医学部附属病院心臓血管外科:土井先生

心臓血管外科 教授
土井 潔 先生

岐阜大学医学部附属病院循環器内科教授:大倉先生

循環器内科 教授
大倉 宏之 先生 

岐阜大学医学部附属病院脳神経外科講師・臨床准教授:榎本先生

脳神経外科 講師・臨床准教授
榎本 由貴子 先生 

岐阜大学医学部附属病院手術部副部長:長瀬先生

手術部 副部長
長瀬 清 先生 

岐阜大学医学部附属病院心臓血管外科講師:坂井先生

心臓血管外科 講師
坂井 修 先生

岐阜大学医学部附属病院心臓血管外科臨床講師:加藤先生

心臓血管外科 臨床講師
加藤 貴吉 先生

岐阜大学医学部附属病院循環器内科臨床講師:吉田先生

循環器内科 臨床講師
吉田 明弘 先生 

岐阜大学医学部附属病院循環器内科臨床講師:成瀬先生

循環器内科 臨床講師
成瀬 元気 先生 


施設概要

病床数:614床
主なご導入装置:ARTIS pheno, ARTIS icono D-Spin, Artis zee BA Twin, Artis zee BA, Artis zee BC, ARCADIS Orbic, MAMMOMAT Inspiration, ACUSON SC2000, ACUSON Sequoia, 他

岐阜大学医学部附属病院
ARTIS pheno を設置した岐阜大学医学部附属病院ハイブリッド手術室

ARTIS pheno を設置したハイブリッド手術室
(写真提供:岐阜大学)

ARTIS icono D-Spin を設置した岐阜大学医学部附属病院ハイブリッド手術室

ARTIS icono D-Spin を設置したハイブリッド手術室
(写真提供:岐阜大学)