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透視併用の可能性がある症例には積極的にハイブリッド手術室を活用

山形大学医学部付属病院 心臓血管外科

2022-08-13
Dr.Uchida-dai2geka-YamagatauniversityHP

第二外科教授 内田 徹郎 先生

臓器横断的なチーム医療を推進し、山形県の医療の最後の砦として先進医療を提供している山形大学医学部附属病院。第二外科に属する心臓血管外科では、ハートチームによるSHD治療やステントグラフト治療だけでなく、開胸を伴うオープンステント術や補助循環用ポンプカテーテルの導入など、透視が必要になる可能性のある症例には、積極的にハイブリッド手術室を使用しています。円滑なハートチーム運営の秘訣と、加速する手術の低侵襲化が抱える課題なども含めて、第二外科教授の内田徹郎先生にお話をうかがいました。

第二外科は、それぞれが専門医資格を有する心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科の三部門からなり、お互いが有機的に結びつきながら、幅広い年齢・疾患に対応しています。近年では、臓器・疾患別の外科体制が増えていますが、当院ではナンバー外科の体制を維持する中で、科内の協調関係を確立しています。たとえば心臓手術を行う場合でも、同時に肺に問題を抱えている患者さんは少なくありません。逆もまたしかりです。そういったケースに合同カンファレンスを行い、有機的な議論を行えるのは大きなメリットだといえるでしょう。また、肺の手術中に血管損傷が起きた場合は、私たち心臓血管外科医が、また心臓血管手術中の肺損傷に対しては呼吸器外科医が迅速に対応していますが、そのように敷居を低く、チームとしてスムーズに連携できているのもナンバー外科のメリットだと思います。所帯としては単科よりも大きな構成となりますが、それによるデメリットを感じることはないですね。

心臓血管外科の特徴としては、地方大学ということもあり、あらゆる心臓血管疾患に対応する必要があります。また、全国的な流れとして低侵襲手術にも力を入れていかなければなりませんが、当科ではかなり早い時期からステントグラフト手術を行ってきた実績があります。2015年にハイブリッド手術室ができてからは、より快適にステントグラフト手術が行えるようになりました。

ハートチームが結成されてから、内科と外科のコンビネーションは格段に向上したと思います。当院ではTAVIの経大腿動脈(TF)アプローチは基本的に循環器内科が行い、経心尖(TA)、鎖骨下動脈、および大動脈アプローチは心臓血管外科が主導で行っていますが、症例を取り合うなどということはまったくありません。カンファレンス自体も以前から合同で行っていたのですが、TAVI導入をきっかけに、ハートチームというものを改めて意識しながら形作ったことで、結果的にさまざまな垣根が低くなり、いろいろなことがとてもやりやすくなりました。

私は、外科医は謙虚であり、患者さんを紹介してくれた内科医に対して、恥ずかしくない手術を行わなければならないと常々思っています。内科と外科で患者さんの紹介がうまくいっていないようなケースでは、内科の要望に外科が応えられていないことが多いのではないでしょうか。自分たちに問題があるのではないかということを、常に顧みる姿勢が必要だと思います。近年、TAVIやステントで内科・外科の領域がオーバーラップすることが増えていますが、やはり内科でないとダメなこともありますし、外科の方がいい場合もある。つまりは、お互いの専門性をリスペクトしながら協調することが大切でしょう。その点、当院の循環器内科は、内科適応症例と外科適応症例を適切に判断してくれるので、信頼感があります。いうべき意見はいいながらも、お互いのプライオリティを認め合うことが、ハートチームの円滑な運営の秘訣だと思います。

心臓血管外科専用の心臓手術室が二つありますが、それに加え、ハイブリッド手術室にも人工心肺の配管や機械を設置して、心臓手術ができる設備を整えてもらいました。それによって、ステントグラフトやハイブリッド手術だけでなく、開胸・開腹中にカテーテル操作が必要になる可能性のある手術に関しても、ハイブリッド手術室で行えるようになっています。この環境下で行うことで、さまざまな病態の変化や合併症に対しても迅速で適切な対応が可能になっていると思います。運用としては、心臓手術を行う日以外にエンドバスキュラー治療を行う日を、週1日水曜日にもらっており、そこで集中的にステントグラフトを行っています。当院のハイブリッド手術室は循環器内科と心臓血管外科だけでなく、呼吸器外科や脳神経外科、整形外科にも好評で、稼働率はかなり高いですね。

たとえばオープンステント手術です。大動脈弓部の人工血管置換を開胸で行ったうえで、そこにステントを留置する手術ですが、場合によっては大腿動脈からカテーテルを操作しながら行うこともあるので、ハイブリッド手術室の方が安心です。また、人工心肺を離脱するときにIABPが必要になる症例にも、確認が容易なので有用だと思います。さらに、近年では補助循環用ポンプカテーテルImpella(日本アビオメッド社製)を導入する手術ですね。心臓手術後の心不全などの症状が重いときには、Impellaで左室を補助しなければいけないケースがありますが、そういった、人工心肺装置を使用する手術でImpellaを導入する可能性がある症例に関しては、透視下でしっかりと左室に挿入する必要があるので、ハイブリッド手術室で行うべきでしょう。ハイブリッド手術室で手術をしても、必ず透視を使うわけではありませんが、レスキューとして透視が必要になる可能性がある症例には、あらゆる状況に対応するためにも、積極的にハイブリッド手術室を使うようにしています。

ステントグラフト手術では撮影位置がほぼ決まっていますが、人工心肺を使用する手術やTAVIに関しては、麻酔科医やエコーの医師、人工心肺装置、複数のスタッフなどがいて、その配置の中で撮影を行わなければなりません。天井懸垂型のアームは縦横の動きしかできないので進入角度に制限がありますが、Siemens Healthineersのzeegoのアームは斜めからの進入も可能で、あっちに行ったりこっちに来たりしながら、ピンポイントで適切な角度を選択して透視・撮影できるというのが、とても有用だと感じています。我々の手術は仰臥位だけですが、他科では色々な体位で撮影することがあるため、アームの進入範囲の自由度が高いzeegoは使い勝手が良く、ハイブリッド手術室の稼働率の高さにつながっているようです。

手術の低侵襲化は今後もますます進んでいくと思いますが、低侵襲化を追求するあまり、一番大切な手術の安全性がおろそかになっては何にもなりません。安全性が担保されたうえでの低侵襲の追求は大切ですが、そういったものを推進する過程で、往々にして安全性が軽んじられる可能性があるので、そこだけは見失ってはいけないと感じています。私は心臓血管外科医として開胸・開腹手術も行うし血管内治療も行いますが、何よりも患者さんにとって一番いいと思われる治療を選択することが肝心だと考えています。自分が得意な分野に寄せるのではなく、さまざまな低侵襲・高侵襲の治療の中から、その患者さんに最もいい適応だと思われる治療を見極めることが、外科医の手技以外の技量であり、低侵襲治療を行うにあたっての資格ともいえるのではないでしょうか。手技だけでなく、的確なディシジョン・メイキングをできることが、これからの外科医にはより求められていくと思います。

事前に撮ったCT画像と透視画像を重ね合わせる機能は有用だと思うのですが、やはりリアルタイムのCT画像ではないので、ズレが出てしまいます。できれば、造影したものをリアルタイムで可視化して3Dにできるようなシステムがあり、それを透視画面に同期しながらワイヤリングなどができるようになれば、より使いやすくなると思います。また、アームや支柱がもう少しスリムになってくれると、さらに自由度が増すのではないでしょうか。究極は、アームそのものがなくなるといいですね。



(2022年5月9日取材)