診療報酬改定の基本的視点の内容
診療報酬改定において、「基本的視点」は一貫しています。「機能分化と連携」「安全・安心な医療」「効率化を通じた医療保険制度の持続可能性向上」の3つはずっと大きな課題として挙がっており、2018年改定からは「働き方改革」が加わり、2024年には賃上げの原資となる改定も盛り込ました。さらに、2024年改定では「医療DX推進」が新たに加わりました。中核となる「機能分化と連携」の中でもっとも重視されているのが「入院医療の機能分化」で、その中でも最大の課題は7対1病床の絞り込みになります。急性期病院の診療収入の中核をなす入院料を、病床の機能分化を促すように改定するということです。
病院の診療収入の内訳
下図は、病院の診療収入の内訳を大まかに見たものです。全国公私病院連盟令和5年度調査によれば、DPC 病院の患者1人1日当たりの収入は、入院が約7万円(70,105円)で、そのうち入院料等とDPC 包括部分の金額を合計すると(本稿では「入院料等」と表現)約4万3千円(42,646円)となります。ちなみに入院料等以外の部分の中で最も大きいのは手術料です。外来は約2万円(19,167円)です。外来/入院比率を1.5、つまり、一日の外来患者数が入院患者数の1.5倍いたと仮定すると、DPC 病院の1日当たり診療収入に占める、入院料に相当するものの割合は43%となります。この大きな部分に関する診療報酬のしくみを改定することで、急性期病院の機能分化を進めるということなります。
病床機能報告
4つの病床機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)への分化の状況を示したものが下図になります。左から2番目は2022年度の病床機能報告での実態で、左から3番目は同報告の中の「2025年の見込み」ですが、この2025年の見込みと、右端の2025年の必要数とは、隔たりが大きいです。つまり、急性期病床から回復期病床への転換が、2025年に目標とされている数字には、まったく及びそうもない状況であるということです。
一般病床(療養、精神、結核、有床診を除く病床)の入院料別病床数
急性期一般1である7対1入院料の病床はどれくらいあるのか。下図は一般病床の入院料別の病床数の内訳です。下図の左では令和3年時点で90万床弱の一般病床がある中で、一般病棟入院基本料が大多数(73%)を占めています。その上の濃い緑は特定機能病院の入院基本料。一般病棟入院基本料の下には救命救急やICU などの特定入院料と呼ばれるものが並び、いちばん下のオレンジ色はその他です。いちばん上の黒の部分は地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟で、そのうち療養病床ではなく一般病床として届け出ているものです。これらを合わせて90万床弱となっています。右の円グラフは、この一番多い「一般病棟入院基本料」の病床数内訳を示しており、7対1看護配置の急性期一般入院料1が最多の63%を占めています。DPC の病床は、7対1あるいは10対1の急性期一般入院料のいずれかを届け出ていることが要件になっていますので、このグラフのオレンジか黒のいずれかに含まれています。
急性期一般病棟入院料の変遷
入院料1~7(7は2022年度改定で廃止)の点数は過去数回の改定でゆるやかな右肩上がり傾向です。平均在院日数の施設基準は、入院料1だけが他より短く18日となっていましたが、今回改定で16日に短縮されました。入院料1の病院にとっては、もちろん厳しくなる傾向ですが、「重症度、医療・看護必要度」に関する改定内容のほうが影響は大きそうです。「重症度、医療・看護必要度」については「Vol.2 重症度看護必要度から読み解く」で詳しくお伝えいたします。
地域包括医療病棟の新設
急性期から回復期にかけての患者に対応する入院料に関する、2024年度改定による大きな変化を下図に示しました。現行(改定以前)は、急性期は急性期一般入院料1~6、回復期は地域包括ケア病棟入院料の2種類でカバーしていますが、今回の改定以降は、新設される「地域包括医療病棟入院料」が間に加わります。これは主として、急性期一般入院料の病床がこれに移行することを想定しているものです。したがって、急性期入院料に関する今回改定の内容は、この移行を誘導する内容となっています。