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宮田 五月 先生

小山ステーション脳神経外科・内科院長の宮田五月先生は、脳神経疾患の専門医療をもっと身近にしたいという理念を実現するべく開業した同院で、MRI検査を経営の柱にすることに決めました。高性能のMRI装置を導入し、エキスパートの診療放射線技師や読影医を含むスタッフ体制も充実させたことで、安定した検査実績によって経営基盤を固めながら、目指す医療を実践しつつあります。同院の具体的な取り組みについて、宮田先生にお話を伺いました。

 開業時、設備投資の柱として導入したMRI装置は、1.5Tを選択しました。質の高い脳神経疾患診療を提供するうえでは高画質の装置が必須と考えましたし、診療圏調査でも近隣に1.5T MRI装置を導入しているクリニックは存在しないことを確かめていたので、当院のアピールポイントにできるという予測もありました。また、高画質のMRI画像は、診療に対する患者さんの信頼と満足度を獲得するうえでも不可欠と考えていました。医師が言葉を尽くして説明するよりも、鮮明に描出された画像1枚を見てもらうほうが患者さんの理解の助けになるといったことは、しばしば経験するところです。
 一方、導入コストは高額になりますので、購入を決める前にメーカーのサポートのもと、収益シミュレーションを行いました。選択した装置はランニングコストの電気代が比較的低く抑えられていたことが大きなメリットで、収益上の目安となる検査件数を算出してもらって妥当な選択と確認できたことから、導入に踏み切りました。

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2021年1月の開業当時より同院の診療を支える1.5T MRI装置MAGNETOM Sempra

 当院のMRI検査件数は1日約20件に達しています。高画質のMRI画像を効率的に得るには、MRI装置の性能だけでなく撮影技術も非常に重要と考えています。当院のMRI検査で撮影を担当している2人の診療放射線技師は、私が自治医科大学付属病院在籍当時にお世話になっていた方々です。技術に全幅の信頼が置けることから、開業時に当院に加わってもらいました。実際、エキスパートのこだわりを持つ2人の撮影技術によって、高い検査効率を達成しながらも非常に高画質なMRI画像が常時得られており、MRI検査を柱とする当院の経営方針が根幹で支えられていると感じています。
 他方、MRI検査について、経営の柱としてその質と件数の両方を追求しようと考えると、患者さんに快適に検査を受けてもらうためのケアも大切になってくると思います。例えば、閉所恐怖症がある患者さんにどう検査を受けてもらうかです。当院では、MRI検査室内に設置したテレビモニターに映像を流し、それを装置内で鏡に映し出すことによって、検査中の患者さんが映画やアニメを楽しめる仕組みを導入しました。この仕組みは当院のMRI検査のアピールポイントとして、県外からも検査希望の患者さんが来院することにつながっています。またこれを活用し、小児の患者さんのMRI検査を支障なく実施できたケースも経験しています。

 加えて、当院においてMRI検査を効率良く実施するための鍵として重視しているのが、看護師と連携した診療フローです。来院患者さんの問診結果を診察前に看護師がチェックし、MRI検査が必要な可能性があると判断した場合は速やかに医師に報告してもらいます。医師は順番を優先して素早く診察を行い、MRI検査を行う指示を出す一方、看護師はMRI検査の順番を入れ替えるなど、他の予約患者さんの調整をします。このように、看護師と連携してMRI検査の可能性がある患者さんを診察前に見つけ出せるようなフローとしていることが、高い検査効率を実現していると考えています。また、MRI検査の情報を得られていることで、患者さんとのコミュニケーションの質が上がって前向きな治療意欲を引き出しやすくなり、ひいては患者さんの満足度向上にもつながっていると感じています。当院の看護師による、MRI検査の必要性に対する的確な判断能力がこうした診療フローを支えていると考えており、看護師が問診結果から脳梗塞を疑ってMRI検査実施に結び付いたケースもたびたび経験しています。
 このようにMRI検査について高い検査効率を実現できている当院では、予約なしでの検査を希望する患者さんに対しても、約9割は当日中の検査実施に対応できています。駅近の立地のおかげで、検査待ちの時間を院外でストレスなく過ごしてもらいやすいことも、予約なしの検査対応を容易にしていると感じています。
 なお、開業当初は自由診療で行う脳ドックを収益の柱の一つに位置付けていました。しかし、想定以上に件数が多くなり業務負担が過重になってきたため、現在は積極的な実施はしない方針としています。

 当院の経営戦略として新患患者さんの獲得を重視していることを先に述べましたが(第1回参照)、その達成にあたっては、近隣医療機関から受けるMRI検査目的での患者紹介も大きな役割を果たしています。現在、関節などの痛みについて整形外科クリニックから、また脳卒中を疑う諸症状について内科クリニックから、さらに複視症状について眼科クリニックから、原因精査をご依頼いただくことが多く、1日3〜5件程度のMRI検査を受託して実施しています。これらの依頼元からは、当院の高性能のMRI装置と優れた撮影技術によって取得する高画質の画像を高く評価いただけています。加えて、受託検査のMRI画像読影とレポート作成については、自治医科大学放射線医学講座で教授を務めていた杉本英治先生が非常勤医師として担当しています。地域でも知名度の高い杉本先生による読影結果への信頼性が高いことも、当院のMRI検査への高評価と、それによる継続的な受託につながっていると思います。他方、当院の高画質のMRI画像は、連携する地域中核病院からも診療レベルへの高い信頼を獲得することにつながっていると感じており、逆紹介の件数も増えてきています。

 依頼元医療機関との連携を強化するうえで、コミュニケーションに心を砕く努力も重要だと考えています。整形外科クリニックの先生方の場合、ご自身で読影できる方が多いので、検査当日に画像データだけ患者さんに預けてすぐに確認いただけるようにし、読影結果レポートのみ後日あらためて郵送するようにしています。内科などのクリニックの先生方には、まずご依頼への御礼の返信を郵送した後、読影結果レポートをあらためて郵送しています。当院に検査依頼して良かったと思っていただけるよう、やり取りの手間を惜しまないことを心掛けています。
 1.5T MRI装置に加え、優れた撮影・読影技術を有するスタッフ陣をそろえ、ハード・ソフト両面が充実したMRI検査体制を整えてきました。この体制のもと、地域医療により一層貢献していくことを当院の役割の一つとして、今後も担っていきたいと思います。


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