きみつ腎・泌尿器クリニック 第1回
病診連携における泌尿器科開業医へのニーズを
精緻に見極める
千葉県の南房総地域の君津市で2022年5月に開業したきみつ腎・泌尿器クリニックは、わずか5ヵ月で1,200人の患者さんが訪れるようになり、その数は1年2ヵ月で4,000人に達しました。病診連携における泌尿器科開業医のニーズを精緻に見極めて立地を選定したという、院長の時田貴史先生に話を聞きました。
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患者さんと周辺医療機関に
「あってよかった」と思われる施設を
私の開業において、「集患」をツールや手法などを利用して準備するという意識はあまりありませんでした。泌尿器科の専門的な医療が不足がちな地域を見極めることで、必然的に患者さんはいらっしゃるという思いがありました。
泌尿器科に限らず、医療は地域連携で行われる時代です。しかし、医療資源の乏しい地域では、基幹病院に患者さんが集中し、勤務医の負担が過大となる一方で、患者さんは長い時間と労力をかけて通院することを余儀なくされます。私自身、開業前は複数の基幹病院で勤務していましたから、高度な専門医療を終えた患者さんの継続的な診療を担ってくれる病診連携の受け皿があってほしいと感じていました。特に、以前勤務していた千葉県君津市の基幹病院では、同市以南に泌尿器疾患の患者さんを受け入れられるクリニックが極めて少ないことから、多くの患者さんが集中しており、紹介先がないままに患者さんを抱えこむ状況でした。
そうした経緯から、この君津市での開業を意識するようになりました。受け入れ先を求めている基幹病院の先生方や、気軽に受診できる診療所を探している患者さんたちの顔が想像できたからです。実は隣の木更津市の方が出身地で土地勘はありましたし、泌尿器科専門クリニックがない背景には特別な事情があるのではと少し不安もありました。しかし、患者さんだけでなく、基幹病院を始めとする他の医療機関からも「あってよかった」と思っていただけるクリニックの設立が、私の大事なコンセプトとなり、君津市で開業を決めました。
病診連携を視野に
開業前にコンセプトを基幹病院へ周知
多くの患者さんがいらしてくれているもう1つの要因は、開業前、同僚だった基幹病院の先生方に、私の開業コンセプトをしっかりと伝えていたことだと思います。基幹病院退院後の専門医療の継続を引き受けること、基幹病院を受診する以前に専門医療を地域で完結させること、そのためにCTなどの高度検査設備ももつことなどを、開業前にプレゼンテーションしていました。
一方で、開業前後には地道に折り込みチラシを配ったり、電柱広告を数十か所に出したりもしました。また、看板やネット検索だけでなく、家族や同じコミュニティの人に薦められて来るケースも多かったので、疾患や薬剤について丁寧に説明すること、分からないことや専門外のことはきっぱりとそう伝えること等、患者さんに信頼されるコミュニケーションを心がけました。
自分に何が求められているか
考えることが集患の鍵
開業後、間もなくして基幹病院からの紹介が増え始め、続いて初診の患者さんが地域から、そして遠方からも訪れるようになります。延べ患者数は、2022年に開業してから5カ月で1,200人を超え、1年2カ月で4,000人に達しました。やはり基幹病院には受け皿のニーズがあり、地域には、受診の敷居が低い泌尿器科クリニックを求める患者さんが多数潜在していたということでしょう。
集患において、私の場合は「何がやりたいか」よりも、専門医としての自分に「何が求められているか」を考え抜くことを大事にしました。先日、地域の勉強会に参加した際、基幹病院の先生から「先生のクリニックがあって本当に助かってます」と言っていただきました。やりがいを感じ、純粋にうれしかったです。