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植月祐次先生

医療法人健優会うえつきクリニックは、2016年に開業した泌尿器科単科の診療所です。開業の際、銀行やコンサルタントからは「泌尿器科単科では経営的に難しい」と言われたそうですが、院長の植月祐次先生は泌尿器科専門診療にこだわりました。泌尿器がんから夜尿症まで、泌尿器疾患であれば幅広く患者さんを受け入れる方針で患者満足度を重視した診療を続けてきた結果、現在では、1日の通院患者数が平均して約85人、新患が毎月180~200人という診療所に成長しました。植月先生に集患の秘訣をお話しいただきました。

 開業前の診療圏調査では、開業から数ヵ月の1日の来院者数は5人前後と予測されていました。地方では泌尿器科単科で開業している先生は当時ほとんどなく、コンサルタントからは、これではとても経営的に成り立たないので内科や皮膚科などの集客を見込める診療科も併科として標榜するように言われました。しかし、私が自信をもって診療できる分野は泌尿器だけでしたので、周囲の意見には従わず、泌尿器科単科で開業しました。
 さらに集患施策として、広告宣伝の類は一切行いませんでした。地方ではありがちな駅看板、道路看板、電話帳、バス車内放送だけでなく、ネット広告など、ありとあらゆる広告媒体が宣伝にきましたが、費用対効果からやめました。お金がなかったというのもあります(笑)。
 ただ一方で、目の前の患者さん一人ひとりに全力を尽くすということは、強く心掛けました。結果的に口コミが広がったようで、初月から患者さんの数は1日20人以上に達しました。それから現在に至るまで、広告宣伝やSEO対策の類は一切行っておりません。地方では口コミが一番の広告であり、正攻法である丁寧な診察と説明が最も有効ということではないでしょうか。無料ですしね(笑)。

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「泌尿器科専門医として地域の皆様に気軽に安心できる医療を提供する」をモットーに2016年から開業。

 開業当初は「本当に患者さんが来てくれるだろうか?」と皆さん不安になると思います。私ももちろんそうでした。縁があるところで開業するのなら、前所属先といかに良い関係を築くかがスタートダッシュには欠かせません。
 私の場合は開業前の約7年間、天理よろず相談所病院に勤務していました。奈良県では有数のハイボリュームセンターで地域の先生方、患者さんの信頼も厚く、患者数、手術数も大変多い病院でした。そこで泌尿器科専門医として患者さん一人ひとりにできる診療を重ねてきた結果、当時診療していた半数以上が開業後の当院に来てくださいました。高齢の患者さんは様々な診療科を受診しておりついており、それぞれの医師というよりはその病院を頼りにしている方が大半で、開業医の先輩方からは「2~3割が開業時に来てくれれば御の字」と言われておりましたので、大変ありがたかったです。

 私は、わが子の病気がきっかけで開業を意識し始めましたが、開業するに際し「あいつは手術ができないから開業した」と言われたくない思いがありました。そのため、勤務医時代は腹腔鏡手術やロボット手術といった高度医療のスキル習得にも励み、ある意味、高いレベルで手術をできることを開業の絶対条件としていました。今は手術はしていませんが、手術を数多く経験したことが結果的に、後方支援病院への適切なタイミングでの紹介につながっています。特に当院からの紹介は手術症例が多く、紹介した時点で患者さんに手術の説明を大まかにできることで、患者さんや後方支援病院の先生にも喜ばれていると思います。
また、開業する際には当時の泌尿器科部長に相談し、病院の受け皿不足や手術指導医の不足といったニーズを伺ったうえで、この天理市に開業を決めました。こうした経緯から今も非常勤で勤務をさせていただいており、安定した病診連携につながっています。当院からの紹介患者さんを例にすると、病院で電子カルテを見て患者さんの経過を把握したり、入院中にタイミングが合えばその患者さんに院内でお声掛けしたりすることもできますので、病院にとっても患者さんにとっても、良い診療環境を作り出せていると思います。

 当院には、病診連携だけでなく、診診連携によって紹介された患者さんも多く来られます。地域の医師会に所属し、県医師会の広報担当も拝命するなどして地域の先生方とは交流を深めており、他科の先生方や薬剤師、患者さん向けの講演会も積極的に行っています。私のモットーは泌尿器科専門医として、泌尿器が関わるならば、がんや排尿障害だけでなく、小児泌尿器科や女性泌尿器科まで提供する、ということです。それに従い、周囲の開業医の先生方にも、泌尿器疾患の患者さんがいれば、当院が受け入れて対応するので、遠慮なく気軽に紹介してほしいと話してきました。例えば、PSA(前立腺特異抗原)の値が少し高い高齢者や、尿潜血のみで何も症状がない方など、病院に紹介するかどうかを迷う患者さんでは、まず当院に相談をいただいています。そこで専門医の立場から紹介する必要があるかどうかといった見極めを行っています。
 そして同様の思いから、小児の夜尿症と学校検尿の精密検査も当院では多く受け入れています。地域の小児科で泌尿器科疾患を診察できる先生は少なく、腎臓専門医も少ないのが実情です。また、学校検尿については、集団スクリーニングという性質上、偽陽性が多いのですが、小児の腎臓疾患は見逃してはならない病気です。精密検査では尿沈渣検査が必須ですが、尿沈渣検査の実施は泌尿器科専門医でなければ難しいと思います。さらに専門医であっても小児への対応は様々な事情から困難となるケースが多くあります。腎臓専門医も少ないのが実情ですから、地域貢献の意も込めて、当院で対応できればと思っています。
 今後も、患者さんが少しでも満足して、安心して泌尿器科診療を受けられる医療機関、信頼される医療機関を目指して取り組んでいきます。

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