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総院長の石井 賢先生(左)とチーフトレーナーの浦田 龍之介先生(右)

2023年12月に東京・永田町でオープンしたNewSpineクリニック東京は、一般的な保険診療のみのクリニックとは異なる経営スタイルを取り入れ、個々の患者さんにとって“最良”の脊椎・脊髄疾患診療と運動器抗加齢治療を提供することを目標としています。第1回でその診療と経営の特徴を語ってくださった総院長の石井賢先生に、その実現や実践に欠かせないもの、そして将来の展望について伺いました。

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トレーニング室。瞬間調光ガラスや壁面絵画などで、居心地のよい空間を創出。飾ってあるユニホームは、石井先生が大学病院時代に黄色靭帯骨化症の手術を行ったプロ野球選手からの寄贈。

 当院のモットーは、診察時間を十分にとって、病状はもちろん、生活や仕事、家族構成などについても十分に情報を聴取して、患者さんの価値観も理解したうえで、一人ひとりにマッチした“最良”の診療手段を提案することです。そのうえで、私が開院時にまずこだわったものは、クリニックの内装でした。
 当院には、いくつかの医療機関を受診しても診断がつかなかったり、改善が得られなかったりして辛い思いをしてきた患者さんがしばしば来院します。また、患者さんのなかには重度の病気で治療に時間を要し、苦しんでいる方もおられます。こうした多様な患者さんたちが少しでも居心地よく、心身の負担を最小限に過ごしてもらうために、例えば院内のカラーは落ち着きのあるモノトーンで統一しました。ねじ1本の色やドアの取っ手の素材にも配慮し、間接照明で明るさを控えるようにもしています。待合室にはプライバシーを守るための個室を用意したり、リハビリ室には瞬間調光ガラスなども取り入れたりしています。

自らの姿勢がスタッフの
ホスピタリティと主体性につながり
患者さんにより温かい空間を生む

 一方、どれほど良い空間で、どれほど良い診療を提供できたとしても、接遇といった医業以外の要素も整っていなければ、患者さんの満足を得ることはできません。その点においては、やはりスタッフが非常に大切な役割を担ってくれています。現在、当院には医療事務と看護師、理学療法士が各2名、診療放射線技師が1名いますが、全員が「来院してくださった患者さんには皆満足して帰っていただきたい」という意識を共有し、受付やレントゲン室、また電話口などで丁寧な接遇を自ら実践してくれています。
 また、1人のスタッフが休んだ場合、一般的には同じ職種のスタッフがカバーすると思いますが、当院では他職種のスタッフがサポートに入ります。理学療法士や看護師、あるいは放射線技師が会計を行うこともありますし、X線撮影時のセッティングを放射線技師だけではなく、看護師や理学療法士が行うこともあります。このように、本来業務にとらわれずに職種を超えて教え合い、お互いをサポートできる体制作りを、スタッフ間で主体的に実現してくれています。
 こうした動きは、私から特別何か申してきたわけではなく、スタッフ一人ひとりが自ら実践してくれているものです。とても頼もしく、私は総院長および医師としての自身の役割に集中することができます。患者さん一人ひとりに向き合った診療を行い、診断法や治療法に関する研究を夜遅くまでしたり、外部の病院で手術をした翌朝はそちらに伺ってから当院の診療に来たり、休診日に連携医療機関で手術を行ったりと、医師としては当然の仕事ですが、そうした日々の姿勢が少なからずスタッフに伝わり、クリニック全体の、主体性にあふれた今の空気が生まれているのかもしれません。

スタッフと自身で構成する執行部会が
理念の共有と新しい取り組みへの原動力

 最後に、スタッフの力という点で、このクリニックに欠かせないものは執行部会です。当院には、開院前から理念に共感して構想や計画の準備を一緒に行ってくれたスタッフや協力メンバーがいます。執行部会は、こうしたスタッフたちに、弁護士や官僚ご出身者、および大学教授の先生方にも加わっていただく形で、開院前に設立しました。当院の運営に関わるあらゆる決定は執行部会で行い、開院初期にはほぼ毎日診療後に集まって、より良い診療の実現を目指し、細部にわたる様々な問題点を話し合ってきました。今でこそ、週1回の開催となりましたが、執行部会での話し合いは、変わらず当院の大きな原動力です。これによって理念や考え方の共有が進み、先述したスタッフ間の主体性につながりやすくなりますし、当院のような診療・経営スタイルをもつクリニックは全国的にもかなり珍しく、日々試行錯誤で舵取りをしていかなければならないなか、多様な見方で議論しあえるメンバーの存在はとても重要であると感じています。
 実際に、現在、広報戦略としてLINE、X、InstagramといったSNSなどのデジタルの手段と市民公開講座などのアナログの手段を組み合わせた発信を行っていますが、こうした企画や運営はすべて、執行部会のスタッフが大学勤務時代の経験を活かして行ってくれています。初めての試みについては、私を含め皆で勉強しながら取り組んでおり、執行部会はクリニックの成長に欠かせません。

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 今後の展望として、まずは実績を積み重ねることが第一と考えています。当院は新しい取り組みを多く取り入れており、患者数や治療実績は開院後半年で少しずつ伸びてはいるものの、本当にこうした取り組みが患者さんや社会に浸透すると判断するにはまだ実績が足りません。特に、当院ならではの診療内容をグローバルに発信し、国内だけではなく海外の患者さんのニーズにも広く応えたいと考えていますので、そのような整形外科クリニックとなるべく、引き続き新しい取り組みへの挑戦を続けていければと思います。
 また、これは個人的な目標ですが、若い医師が夢を感じるようなクリニックにしたいとも思っています。私は約30年に及んだ大学病院勤務の間、医師としてのキャリアに明るい希望を抱けていないように思える若手を数多く見てきました。その背景には、日本社会に対する漠然とした不安のほか、医師の働き方改革によって、組織のなかで貪欲な成長やスキルアップを目指しづらくなっている状況もあるように感じます。しかし、広く外の世界に目を向ければ、今はもっと自由に多様な生き方・働き方を選び、活躍することができる時代ではないでしょうか。YouTube等のSNSを使えば誰もが発信力をもてますし、大企業に勤めながら副業で個人事業を成り立たせることもできる時代です。私は、脊椎・脊髄分野と運動器抗加齢の“最良”の診療を考え実践することを実現するために大学病院を退職後、この次世代型クリニックの総院長となりました。当院を成長させていくことが少しでも、若い医師たちの希望や新しい生き方の可能性、また明るい未来の発見につながっていけばと願っています。

    (2024年5月29日取材)

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