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佐々木 秀郎 先生

スタッフの確保や定着について、2021年の開業時からあまり悩むことはなかったと、ささき腎泌尿器クリニック院長の佐々木秀郎先生は語ります。診療の質を担保するため、人に頼らない体制構築にこだわり、設備マネジメントを注力的に実践してきたことが、結果的にスタッフの働きやすさにもつながったと考えられています。人のための、人に頼らない設備マネジメントについて、詳細を伺いました。

 開業するにあたり、人に頼らないシステム作りを重要視していました。患者さんがクオリティの安定した診療を常に受けられるようにすることが一番の目的でしたが、同時に人への依存を減らすことは、逆に人の働きやすさを向上させるのではないかと考えました。ミスを起こして周囲に迷惑をかけてしまうようなリスクが減りますし、患者さんをケアする余力も生じます。休みも希望通りにとりやすくなるなど、長期的なスタッフ満足度につながると思っています。
 加えて、人に頼らないシステムがあるということは、スタッフのよりよいケアによって患者さんがさらに増えたとしても、大きな増員なく対応できる可能性が高いということです。そのため、クリニックの収益がアップした分をスタッフに還元しやすくなります。

 では、どのようなシステム作りに実際に取り組んできたのかですが、まず1つは尿沈査検査の自動化システムの導入です。尿沈渣検査は一般的に手作業でプレパラートを作製し、それを顕微鏡で観察して判定します。勤務医時代は検査部がやってくれましたが、開業後はそうはいきません。実際の尿沈渣検査の運用を把握するため、開業前に自身の人脈をたどって知り合いのクリニックを見学し、プレパラートの作製も体験してきました。その結果、どの過程においても時間と人の力が必要で、確認のための診療中断もあるなど、私が目指すクリニック運営を大きく阻むものでした。
 開業予定日が迫るなか、ネット上でも周囲からも有益な情報が得られず焦っておりましたが、そのようなときに学会の展示ブースで出会ったのが、今当院にある尿中有形成分分析装置です。衝撃的で、電子カルテへの結果の自動転送も可能と知り、ようやく視界が開けた思いでした。

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写真1:患者さんが待ち時間にスマートフォンやパソコンを操作できるスペース

 そのほか重視した設備として、超音波検査室を作らず、診察室をカーテンで区切れるようにしました。検査を行うときに患者さんに検査室へ移動してもらうのは時間がかかるうえ、誘導するスタッフが必要になると感じました。そこで、開業前の設計段階で診察室を広めに確保し、カーテンで仕切って検査を実施できるよう整えました。さらに超音波検査装置は2台にすることで、診療中に次の患者さんの検査準備ができるようにしました。
 また、データを転送できる仕組み作りにはこだわりました。尿沈渣検査や超音波検査の画像や数値が自動で電子カルテに転送されることは、私の目指す運営上、必須でした。USBメモリーを使ってデータを移行させるよりも迅速かつ効率的で、転記ミスの回避にもなります。80万円近くかかりましたが、その価値はあると考えました。
 人のための設備マネジメントとして、患者さんの満足度向上も重要視しています。現在、当院では多いときには1日当たり約80人の患者さんが訪れます。そこで、検査動線を減らす以外に予約制による待ち時間の短縮や、待ち時間にスマートフォンやパソコンを操作できるスペースの設置などに取り組んでいます(写真1)。

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似顔絵を描いたのは、佐々木先生が大学病院勤務時に腎移植を行った患者さん

 こうした取り組みによって、現在では1日あたり80人近い患者さんを受付3人、看護師2人の体制で、定時を過ぎることもなく対応できています。尿沈渣検査の作業を含め、多くの点で人に頼らない体制を敷いてクリニックを運営しているので、あらたに人を採用するときも泌尿器科の経験を求める必要がありません。臨時のアルバイトも入りやすいことから、スタッフの確保や定着に悩んだことがありません。結果的に、一定の診療の質を確保していることで患者さんの満足度を高めており、そのことが安定した来院患者数につながっていると考えています。
 なお、人に頼らない設備マネジメントにこだわってはいますが、ランニングコストの増分が収入の増分を上回ってしまうような投資は基本的にしません。つまり、私の設備投資の主な判断軸は、人に頼らないシステム作りに資するかどうかと、それによって増えるラニングコストが収入増分を上回らないかどうかです。これを一貫してきているからこそ安定したクリニック経営となり、患者さんにもスタッフにも良好な環境を作れているのだろうと考えています。

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